書評

【書評】個人が企業を強くする

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大前研一氏の新刊。

20世紀は「ヒト・モノ・カネ」が経営資源だった。
しかし、21世紀の事業成功の鍵は「ヒト・ヒト・ヒト」である。傑出した1人の個人がブレイクスルーを生み出す。

WEBのしごとをしていると、1人のめちゃすごいエンジニアやデザイナーがプロダクトを劇的に良くする効果を身近に感じる。
時に彼らは10代だったりするが、ミドルエイジ以上の報酬を得ることすらある。

第一章では、昨今の働き方革命を引き合いに、現在の日本の労働制度の問題点を提示する。

安倍政権は賃上げ傾向を主張するが、過去20年間に日本の名目賃金は下がっている。
欧米は2倍近くに成長しているにも関わらずである。
生産性も先進国の中では低い。
これらの問題を解決するには個人ひとりひとりが働き方を考え変えていく必要があり、
政府が押し付ける「働き方改革」では成果はでない。

(例)正社員にこだわることは国内の雇用を減らしかねない
 ┗解雇できない正社員を増やすことは企業にとってリスク。企業は人件費の安い海外に活路を求め、日本全体で雇用が減る。

確かに賃上げの効果は実感できない笑。
成果をかけたコスト(時間やお金)で割った生産性を日常的に意識しているビジネスパーソンもあまり見かけないように思う。
逆に、コスト(主に時間)をかければかけるほど「頑張っている」とみなされることのほうが多い…。

第二章では、傑出した個人<エクセレント・パーソン>に求められる条件を提示している。
AIが発達すれば、定形業務は機械で出来るようになる。
人間に求められるのは、答えのない問題に対してゼロから答えを構築する力である。
鍵をにぎるのはプログラミング能力。
一流IT企業ではエンジニアの給与は1,000万円を超える。

個人的には、今後文系学部出身者は非常に弱い立場になると考えている。
研究者になりたい場合や、自分の専攻が明確に決まっている場合は別だが
特に目標もなく、理系にいけなかったから文系…という選択は厳しい。
自分がまさに二流大学文系学部出身だが、てきとーに文系学部に行くくらいなら、高専でプログラムを学んだほうがよっぽどスキルがつくと思う。

第三章では、21世紀型の企業を解説する。
ひとびとは、よりリーズナブルで豊かな生活を求めるようになってきている。
必要以上のブランド品はいらない、「低欲望社会」に移行している。
いっぽうで、良いものは国境を超えて買われる。
ブロックチェーン技術に立脚するフィンテックについても触れられており、
従来型の銀行・クレジットカード会社の秩序が崩壊すると予見する。

私もミニマリストなので「低欲望社会」は非常にしっくりくる。
アラサーになったからかもしれないが、ファッション雑誌を読んでいても20代前半の時のときめきはもはやない。
その分体験にはお金を払っていいと思う。
これまで「所有すること」しか解決策がなかったことを、「利用する」で済むようにするサービス作りたい。

第四章では、日本に300万人以上いる公務員にこそ働き方革命が必要と説く。
とはいえ公務員だけでなく、普通のサラリーマンも平日の夜と休みを使ってスキルを磨くべきという主張は変わらない。

総じて初見の主張はないが、さすが大前先生というか、主張と論拠・文章構造が非常に明確で説得力がすごい。
普段なんとなく情報収集しながら「そうだよね〜」と共感していることも、
きちんと論拠を示し、論理立てて文章にしようと思うと案外出来ないよな。
時に定量データが少なく、事例だけで語られていることもあるものの、会話のネタには十分。

自分も個人で稼げるようにならなきゃと思わされました。

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